「へぇ、オレを連れてってくれるんすか。珍しいっすね。普段は、大人しくしてろとかそんなことばっかり言うのに、どういう風の吹き回しですか? まあいいっすけどね。オレがどんなに役に立つか見せてやりますよ、センパイ」
暗い墓の上で、少女はそういってパシリと右手で左てのひらを打った。
その姿が自らの知る存在とどこか重なる感覚に、葉佩九龍はただ頬を引きつらせる。何も言わずに、地下へと降りるロープを示した。
葉佩の知る彼ならば、示すまもなく自ら真っ先に《墓》へと飛び込んでいくだろう。だが。
少女が近寄ってくる気配はない。やはり、怖がっているのかと、葉佩は顔を上げた。
少女は、葉佩と同じように微妙に頬を引きつらせていた。
「……どうした」
別に、と。少女は目をそらす。
「アンタ、いつもなら女の子がオレっていうなとかなんとかごちゃごちゃいうじゃないっすか」
ぼそぼそと聞き取りにくくそう呟いた後、少女は急に声を高くした。
「って、いいっすけどね! いいかげんわかってくれたってことで」
さっさと行きましょう、と。今度こそ、少女はロープを手に取った。