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ソードマンの独白4

 大きな黒色の獣に案内――いや、連行されて、おれたちはさわやかな笑みを浮かべる聖騎士のもとにたどりついた。何かに気をとられて足を止めれば、止めた人間のもとにまわり先を促す。なんと、本人が足を止めたことを申告する前に、だ。魔物の気配あれば、先頭で低くうなりおれたちに知らせる。いたれりつくせりの先ぶれだった。
 たどりついたところにいた彼は、大事な仲間だと黒色の獣を紹介した。そして。大きなお世話かもしれないけれど、と。彼はおれたちに世界樹ーーーの使い方を示す。彼の言う通りに操作すると、冷たいグレーで動きを止めていたそれは、鮮やかなオレンジ色の光を放った。
 それを見て、彼は満足そうに頷いた。
「これで、次からは世界樹入り口から直接ここまで飛ぶことができるようになる」
 続いて彼は、このあたりの魔物がもたらす害毒の話や、冒険者として必要な装備のこと、こころがまえのこと、フロアの先にいる恐ろしい魔物のことと、先生よろしく語り始める。
 黒い獣が小さく鳴いた。その声に、はっと彼は話をやめる。
「ああ。最近頑張っている新しいギルドがあると聞いたからつい」
 照れたように彼は、頭をかいた。口元に浮かぶ笑みが、一挙に彼を若者に見せる。
「街であった時にはよろしく。気をつけて」
 待たせたねと彼はかたわらの獣の首を叩く。黒色の獣はおれたちを見た。そして、お義理という態度で、ぱたりと一度だけしっぽをふってみせる。
 おれたちは、口々に礼を言い、気をつけて探索することを誓う。満足げに頷くと、彼はきびすを返す。黒色の獣はゆったりとその後を追った。
 おれたちは、彼らが見えなくなるまで見送った。時折見かける衛兵たちとは違い、自信に満ちた足取りだった。
 彼が見えなくなったところで、おれたちもまた探索の続きをと頷きあう。そんな中、アルケミストが意味ありげにおれを見て言った。
「犬の方が役に立つんじゃないのか」
 何のことだと首を傾げるおれに対し、彼は聖騎士と黒色の獣が立ち去った方角へと顎をしゃくる。
 おれたちも獣を仲間にすることを考えてみてもいいのかもしれないな、と。がっくりと肩を落とすおれに、彼は高笑いとともに追い打ちをかけた。

fin.
2008年03月01日 おんせんにっき